RESIDENCE CASE DATABASE

「住所」の判断を、
実際の裁決と判決から、
解き明かす。

似た事件でも、なぜ結論が違うのか。滞在日数、住居、家族、仕事。裁決・判決で判断された事実を比較し、原文までたどれる研究データベースです。

柳澤賢仁「納税義務をめぐる『住所』の判断」(『税理』2011年5月号)のチェックリストを出発点に、判例を蓄積しています。

37全収録件数
16本文確認済
20要旨確認済
1本文確認済み(民間転載・一部省略)

本文確認済み、公表要旨確認済み、本文確認済み(民間転載・一部省略)の3区分で収録しています。要旨確認済みと民間転載・一部省略の資料は検索・比較の対象ですが、住所判断の統計には含めません。その他、個別に統計対象外とした資料も除外します。全事件の収録を完了したものではありません。同じ事件の審級を重複して数えず、公表裁決と裁判例の関連が未確認の場合はその旨を記載します。

裁決要旨から読む

海外に年間250日以上。
それでも、日本の居住者?

「海外に183日以上いれば非居住者になる」とは限りません。2017年1月23日の大阪国税不服審判所の裁決では、請求人が「国外の住居に年間250日以上滞在している」と主張しましたが、日本の居住者に当たると判断されました。

裁決要旨は、国外の滞在期間の方が長いことに触れたうえで、日本に所有する自宅を帰国中に利用していたこと、生計を一にする妻がその自宅で暮らしていたこと、金融資産の大部分を国内の金融機関に保有していたこと、住民登録や国民健康保険などの事情を総合して、生活の本拠は日本にあるとしています。

日数は重要です。しかし、日数だけで「住所」は決まりません。この裁決は、住居・家族・資産と実際の生活を合わせて検討する必要を示しています。国税庁も、外国に183日以上滞在していても日本の居住者となる場合があると説明しています。

確認範囲:国税不服審判所「裁決要旨検索システム」の要旨(2018年5月11日表示)。大阪・平成28年(所)第36号、2017年1月23日裁決、棄却。「年間250日以上」は請求人の主張であり、正確な認定日数を示すものではありません。裁決全文、対象年、後続訴訟は未確認です。要旨確認済みの裁決として下記の検索・比較に収録し、本文確認済み事件を対象とする統計からは除外しています。

表示中の本文確認済み事件の内訳

分母は絞り込み後の表示件数のうち、本文確認済みの統計対象事件だけです。要旨確認済み、民間転載・一部省略、個別に統計対象外とした事件は、分母・分子のいずれにも含めません。住所の判断を集計しており、納税者の勝敗ではありません。公表・収録の偏りがあるため、勝訴確率や非居住者の認定確率を示しません。

国税不服審判所の公式統計

審査請求で、納税者の請求はどれくらい認められるのか。

最新の2025年度(令和7年度)の認容割合は7.2%です。処理された3,128件のうち、全部認容が80件、一部認容が146件。全部認容に限ると2.6%でした。ここでいう認容は、納税者の請求が何らかの形で受け入れられたことを指します。国税不服審判所・令和7年度の審査請求概要 ↗

審査請求全体の処理結果(課税・徴収関係の合計)
年度処理件数全部認容一部認容認容割合
2021年度2,28216013713.0%
2022年度3,159721537.1%
2023年度2,8731401399.7%
2024年度3,87217152217.9%
2025年度3,128801467.2%

出典:2021年度、2022・2023年度、2024年度、2025年度。2022年度は訂正後の認容件数225件を使用。

5年度を合算すると、処理15,314件に対して認容1,720件、11.2%です(公表件数から当サイトが計算)。年度による変動はありますが、全部認容と一部認容は分けて見る必要があります。一部認容には減額の大小が反映されないため、この割合から取り消された税額の割合は分かりません。

また、分母には取下げ・却下も含まれます。認容されなかった残りを、すべて「課税の中身を争って負けた」と読むことはできません。これは全税目の審査請求の統計で、非居住者事件だけの勝率ではありません。このDBの住所判断の内訳とも区別しています。住所が国外と認められても、源泉徴収義務を争う支払者の請求は棄却される場合があるからです。

国税庁の公式統計

裁判まで進んだ場合は、どうか。

税務訴訟についても公式統計があります。2025年度(令和7年度)は終結201件のうち、国側敗訴が8件、4.0%でした。内訳は全部敗訴6件、一部敗訴2件。全部敗訴に限ると3.0%です。国側敗訴は、納税者の請求が全部又は一部認められたことを示します。国税庁・令和7年度の訴訟概要 ↗

国税関係訴訟の終結状況
年度終結件数国側全部敗訴国側一部敗訴国側敗訴割合
2021年度199766.5%
2022年度186645.4%
2023年度172587.6%
2024年度168534.8%
2025年度201624.0%

出典:2021・2022年度、2023年度、2024年度、2025年度。

分母は年度内の終結件数で、却下や取下げ等も含みます。したがって、残りの96.0%すべてを「課税の中身を争って納税者が負けた」とは言えません。また、国税庁事務年報の課税関係訴訟表は事件番号ごとの集計です。一人の納税者について、関連する全審級を通じた最終的な勝敗を数えた割合ではありません。

審査請求の7.2%と訴訟の4.0%は、対象集団と集計方法が異なります。同じ事件を追跡した数字ではないため、「裁判へ進むと勝率が下がる」という説明には使えません。いずれも制度全体の背景を知る数字として読み、非居住者・住所事件の判断は、それぞれの事実と証拠から検討します。

結論を分けた事情を、並べて読む。

3区分すべての資料を比較できます。確認範囲の行で、要旨のみの確認や民間転載本文の省略部分など、資料ごとの制約をご確認ください。

事件を2〜3件選択してください。

FROM THE 2011 CHECKLIST

21項目から、判断と証拠をたどる。

以下の項目名は2011年の論文の表を基に整理したものです。説明文は現在のデータベース用の編集解説で、原文の転載ではありません。当時の重要度の星は再掲せず、点数による判定も行いません。

「関連する争点の事件」は分類による案内です。その項目を各事件が直接判断したことを意味しません。個別ページで判断の射程を確認してください。

01

滞在日数

対象期間と入出国日の数え方を揃える。日数だけで住所を決めない。

資料の例
入出国記録・旅程

02

滞在日数の割合

暦年、贈与時まで、転出後など、分母が違う比較を避ける。

資料の例
国別の滞在管理表

03

国内外の移動

第三国への移動がどちらの生活・事業を拠点としたものかを調べる。

資料の例
航空券・出発地と帰着地・出張目的

04

国外の住居の実体

契約があることと、実際に継続して暮らすことを分けて確認する。

資料の例
賃貸借契約・家財・利用記録

05

国内の住居の実体

日本に住宅を持つことだけでなく、その使われ方を調べる。

資料の例
権利関係・家財・実際の宿泊

06

国外の査証(ビザ)

在留資格と日本の税務上の住所は別の制度として整理する。

資料の例
滞在資格の内容・期間

07

国内の住民登録

届出と実際の転居・生活の変化が一致しているかを確認する。

資料の例
転出・転入届等

08

社会保険

保険の手続だけで住所の結論を出さず、生活実態と照合する。

資料の例
加入・脱退などの記録

09

職業と給与支払元

報酬の支払元の国と、本人が働く場所を区別する。

資料の例
役職・契約・報酬の資料

10

職業の実体

実際の仕事と、本人がその国にいる必要性を検討する。

資料の例
会議・業務記録・権限分担

11

肩書地

対外的に記載した所在地と、実際の拠点との関係を確認する。

資料の例
名刺・公表プロフィール等

12

家族

同居・別居の理由を含め、本人の生活との関係を見る。

資料の例
家族の居住地・教育・生活の記録

13

生計を一にする配偶者その他の親族

家族との経済的・生活上の関係を具体的に整理する。

資料の例
生活費の負担・家計の実態

14

日本滞在時の場所

一時滞在か、仕事を離れたときに戻る生活拠点かを区別する。

資料の例
ホテル・住宅の利用記録

15

預金口座

口座の形式と、日常生活・資産管理の結び付きを区別する。

資料の例
口座の届出区分・利用実態

16

クレジットカード

日常の支出がどこで行われたか。他の生活記録と照合する。

資料の例
住所登録・利用明細

17

資産の所在

金額だけでなく、利用状況や本人が現地にいる必要性を見る。

資料の例
資産一覧・管理方法

18

携帯電話

契約名義の変更だけを住所変更の証拠とせず、補助資料として考える。

資料の例
契約・利用状況

19

海外居住の意思

意思の表明と、その後に実行された生活の変化を区別する。

資料の例
赴任計画・住居・届出の時系列

20

租税回避の目的性

節税の動機と客観的な生活の実体を混同しない。

資料の例
取引の目的・契約・生活実態

21

出国から取引までの期間

期間だけを安全基準にせず、対象取引時点の適用法と実体を見る。

資料の例
出国・贈与等の取引・生活変化の時系列

本文を探している過去の裁判例

下記は本文未取得の追加調査候補です。上記3区分の収録資料とは別に扱い、検索・比較・統計の件数には含みません。判決本文、対象税目、審級のつながりを引き続き確認します。

東京地裁2005年贈与税事件と関連高裁判決

原審事件番号・掲載情報を確認/原文未取得

東京地裁2005年1月28日・平成15年(行ウ)第518号(判例タイムズ1204号171頁開始)。関連高裁2005年9月21日と合わせ、判決本文を精査して収録する候補。

  • 地裁・高裁の判決原文の取得
  • 判決書での日付・事件番号の照合
  • 対象贈与と住所判定時点の照合
  • 上告・確定状況の確認

税大ジャーナル7号・注12/20(判決原文ではない) ↗

税大論叢50号・357頁注98(原審事件番号・控訴審日付) ↗

一次資料は裁判所、国税庁の税務訴訟資料、国税不服審判所の公表裁決を中心に確認しています。判決・裁決の判断、当事者の主張、当サイトの解説を区別します。未公表の訴訟書面と元のチェックリストPDFは公開していません。